どうもこんにちは、じょんです。
今回は前回に引き続き『商品売買』について取り上げていきます。
前回の解説において、期中の仕訳の基本的なパターンと、決算時における売上原価の算出方法の大枠を説明しましたが、今回は売上原価の算出において必要となる『期首商品棚卸高』と『期末商品棚卸高』の金額の算出方法を取り扱います。
今回のポイントは以下の通りです。
- 商品棚卸高は『数量 X 単価』で算出される
- 数量は足し引きで簡単に計算できるケースが多い
- 単価の算定方法にはいくつかのパターンがある
商品棚卸高の分解
まずは前回のおさらいとして、『期首商品棚卸高』及び『期末商品棚卸高』はそれぞれ、期首と期末の時点における商品の保有残高のことを指します。
なお、前期の『期末商品棚卸高』は当期の『期首商品棚卸高』と一致し、同様に当期の『期末商品棚卸高』は翌期の『期首商品棚卸高』と一致する関係にあります。
これはつまり、前期末に売れ残った商品というのは当期首に保有している商品と同義であり、当期末に売れ残った商品は翌期首における保有商品と同義であるということを意味しており、言われていみれば当然の関係とご理解いただけるかと思います。
さて、この商品棚卸高ですが、その金額は『数量 X 単価』で算出されます。
数量についてはシンプルで、期首に保有していた数量に当期仕入れた数量を足し、当期に売れた数量を引くことで、期末時点で売れ残っている数量を求めることができるように試験問題は作られています。
なお、実務上は期末時点で売れ残っている商品数は計算ではなく、実際に倉庫や店頭に陳列されている商品をカウントすることで、数量を明らかにします。この行為を『棚卸』と呼び、小売店なんかでは期末日の営業終了後に深夜までかけて商品数をカウントするという作業を行ったりします。
一方、単価については少し複雑で、というのも毎回の仕入れの単価が同一であれば、期末時点で売れ残っている商品の単価も仕入れ単価と同一といえるのですが、試験問題においては毎回の仕入れの単価が異なるように設定されるのです。
これは実務でもよくある話で、例えば八百屋の仕入れを考えた時に、収穫量に応じて取引単価が左右されるというのは皆さんにとってもイメージ出来るのではないでしょうか。
この点、宝石店のように仕入れたり売ったりする個数が少ない業態であれば、個々の商品の仕入単価は簡単に記録しておけるのでしょうが、多くの企業においては年間何百万件の仕入・販売取引の結果として期末に売れ残った商品の仕入単価を個別に記録することはほぼ不可能と言えるわけです。
そこで、単価については一点の算定式を用いて計算により求めることが一般的です。
先入先出法とは?
簿記3級の試験範囲に含まれる単価算定式は2つあり、その1つが『先入先出法』と呼ばれる手法です。英語では「first in, first out method」、略して『FIFO(ファイフォ)』と呼びます。
この算式は言葉の通り、先に仕入れた商品から順に販売されるとの前提において、期末時点で残る商品単価としては、より期末に近い時点での仕入単価が適用されます。
以下の表は3月決算の会社の商品の動きを表したものですが、期末時点で残る商品20個の単価を考える際に、先入先出法の考え方によれば、10月と3月に仕入れた商品10個ずつが売れ残っているとの考えから、2,500円(= 10個@120円 + 10個@130円)が期末時点での商品棚卸高となり、単価は125円(= 2,500円 ÷ 10個)となるわけです。
期首 | 10個@100円 |
日付 | 仕入 | 販売 | |||
6月 | 10個@110円 | ||||
8月 | 10個@110円 | ||||
10月 | 10個@120円 | ||||
12月 | 10個@140円 | ||||
3月 | 10個@130円 |
期末 | 20個@125円 |
移動平均法とは?
もう1つの単価算定手法が『移動平均法』と呼ばれる手法です。英語では『moving average method』と呼びます(FIFOのように略されることは稀かと思います)。
この算式は少し複雑で、仕入の度に、もともと保有していた商品と仕入れた商品の個数・単価を基に平均単価を算出する手法となります。
以下の表は先ほどの先入先出法と商品の動きを同じくする表ですが、こちらの方法では、6月に生じた仕入れの際にまずは平均単価を算出することになります。
その後、10月、3月の仕入時においても同様に平均単価を算出しなおし、期末時点の単価は最終仕入時の平均単価となるわけです。
期首 | 10個@100円 |
日付 | 仕入 | 販売 | 移動平均単価 | ||||
6月 | 10個@110円 | 20個@105円 | |||||
8月 | 10個@110円 | 10個@105円 | |||||
10月 | 10個@120円 | 20個@112.5円 | |||||
12月 | 10個@140円 | 10個@112.5円 | |||||
3月 | 10個@130円 | 20個@121.25円 |
期末 | 20個@121.25円 |
なお、移動平均単価の算出はあくまで仕入れの度に生じるものであり、販売時には単価が変動しない点に留意ください。上表でも8月、12月の販売時には数量が減るものの、移動平均単価は変動していないことが見て取れるかと思います。
今回のまとめ
いかがでしたでしょうか。
特に移動平均法については慣れるまで少し違和感のある考え方ですが、試験上は非常に重要な要素となりますので、是非ここで覚えてしまいましょう。
なお、今回説明した『先入先出法』と対になる手法として『後入先出法』というものも以前はあったのですが、今ではその利用が廃止されていますので、興味がある方はGoogle先生に概要を質問してみてはいかがでしょうか。
また、簿記2級以上では『総平均法』という手法が試験範囲に加わるのですが、ここでは説明は割愛させて頂きます。
次回は商品売買に関する残りの論点として、販売した商品の返品等を取り上げる予定です。
それではまた。
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