【監査報酬増額か?】電子帳簿保存制度見直しへの監査人の対応について

その他諸々

この記事は以下のような方にオススメです。

こんな方にオススメ!

  • 監査法人・会計事務所で監査報酬の見積もりを担当する方
    ⇒監査報酬の見積もり時に考慮すべき論点について解説しています。
  • 企業側で監査報酬の交渉を任されている方
    ⇒増額の可能性のある論点について解説しています。
  • 企業側で監査法人の対応をされている方
    ⇒追加で対応が必要となる可能性のある領域について解説しています。

どうもこんにちは、じょんです。

税理士先生を中心に拡散されている以下のニュース。

スキャナ保存・電子取引の要件が緩和 「電子帳簿保存制度」の見直しポイント
2021年度の税制改正で、電子帳簿保存法の要件が緩和され、事前承認制度や適正事務処理要件の廃止などが行われました。そこで、この改正について解説します。

これまで原則として原本での管理が求められていた取引関連書類について、電子データとして保管するための税務上の要件が緩和されており、これにより関連書類の管理コストの削減に繋がるとして様々な業界において前向きに取り組みが進められています。

一方で、会計監査を行う監査法人や会計事務所からすると、これまでチェックを行っていた資料の形式や、被監査会社の資料の管理方法が変わることへの対応を求められており、場合により『監査報酬の増額』に繋がるケースが増えるのではないかと筆者は考えています。

今回は「電子帳簿保存制度」の見直しに対する公認会計士協会の通達をもとに、監査人や企業にどのような対応がもとめられているのかについて解説していきます。

原本の廃棄前に監査人にご相談を

今回の制度改正により、企業側はスキャンした後の取引関連書類を廃棄することが認められており、廃棄することにより書類の管理コストを削減できる点が1つのメリットとして捉えられています。

この点、監査人側からすると、日本公認会計士協会が公表している監査を行う上での実務指針である『監査基準委員会報告書』において、監査で用いる資料について、

「一般的にはコピーや電子データの形式よりも、原本として提供された情報の方が信頼性が高い

という趣旨の記載があるのです。

つまり、企業側からすると、原本の廃棄による管理コストの削減とうインセンティブがあるのに対し、監査人側からすると監査を終えるまではできるだけ原本を保管しておいてもらいたいというパラドックスが生じるわけです。

問題となるのは監査人が求める原本が既に廃棄されていたという場合、監査人側からすれば、

『何かを隠すために意図的に廃棄したのでは?』

という疑いを生む可能性がありますから、実際に廃棄をする前には監査人の合意を得ておくことが無難といえます。

なお、日本公認会計士協会の公表資料においては、監査人への推奨事項として以下のように記されています。

監査上必要と判断される金額以上の契約書など、重要な監査証拠となり得る書類の原本を、監査に必要な期間、保存することの必要性に関して、被監査会社と事前に十分協議することが適切と考えられる。

引用元:自主規制・業務本部 平成27年審理通達第3号「平成27年度税制改正における国税関係書類に係るスキャナ保存制度見直しに伴う監査人の留意事項」

監査人は資料管理プロセスの追加検証が必要

今回の制度改正に伴って、企業側の帳簿の保存に関する実務的なプロセスが大幅に変わることが想定されますが、その場合、変更後のプロセスについて監査人としても十分に理解すること、そして、プロセスが適切に整備・運用されているか否かの検証が求められることになります。

この検証は、基本的には監査人にとってこれまでの業務に対して追加で時間を要することになりますから、すなわち、監査報酬の増額に直結することが想定されます。

監査報酬の体系

ここで監査報酬の計算方法について説明しておくと、『時間単価 X 想定作業時間』という算式で求められるのが一般的です。

『時間単価』
業務に携わる人間の等級に応じて設定されている1時間当たりの報酬額のことを指し、職位が高くなるにつれてこの単価は上昇するのが一般的です。

『想定作業時間』
監査業務が終了するまでに必要と目される作業時間のことで、職位なり人ごとに、年間何時間の作業が見込まれるのかを事前に見積もり、上記時間単価を乗じることで監査報酬の大枠は決定します。

なお余談ですが、弁護士先生の報酬も同様の決定方法がとられるケースが多いかと思います。

今回の制度改正により、後者の『想定作業時間』が増えるため、監査報酬も増額となる可能性が高いというのが筆者の考えです。

そして、企業側からすれば監査報酬の増額のみならず、監査法人の対応にも相応の時間を要することになる可能性がある点については事前に理解しておくことが望ましいといえます。

なお、想定作業時間が増えることについて、日本公認会計士協会の公表資料においては以下のように記されています。

本改正により国税関係帳簿書類に関して電子保存を採用する企業が増加すること、又、採用する企業において新たな保存・検索要件等に沿ったプロセスの整備及び運用が求められ、監査人側においても、その対応に関する理解及び監査上の対応に時間を要することが見込まれる。

引用元:令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しを受けた監査上の対応について(お知らせ)

おわりに

いかがでしたでしょうか。

資料の管理コストの削減というメリットがある反面、監査の観点からすると相応の工数が発生することが見込まれますため、制度変更当初は企業側、監査人側双方にとってやや負担が強いられることが想定されます。

ただし、少なくとも資料の管理プロセスの検証については、一度行ってしまえば翌年度からはそう手間はかからないことが想定されますので、まずは初年度をどう乗り切るかについて、監査人・企業間で早期に十分な協議が持たれることが重要ではないでしょうか。

それではまた。

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