この記事は以下のような方にオススメです。
- 私たちの年金がどのようにして運用されているのか知らない方
⇒基本的な運用方針について解説します - 他国の年金基金と比較して日本の運用はどう違うのか気になる方
⇒他国の主要な年金基金との比較を引用しています - 自身の運用方針を決めかねている方
⇒学ぶ価値のある世界最大の年金基金であるGPIFのポートフォリオを把握出来ます
どうもこんにちは、じょんです。
先日話題になったこちらのニュース。
昨今話題となっている中国恒大集団に対して、日本の年金基金を運用するGPIFが約97億円の投資をしていたというものですが、今回伝えたいのは、『そんな危ないところに97億円もの投資をしていたのか、けしからん!』という話では全くなく、『GPIFは高度に分散投資を実行していた』ということです。
今回はGPIFのポートフォリオについて、各国の年金基金との比較も交えつつ解説していきます。
GPIFのポートフォリオに占める中国恒大集団宛投資について
以前に以下の記事でも書いた通り、GPIFのポートフォリオの目標は国内株式・海外株式・国内債権・海外債権の4区分を25%ずつ保有するというものです。
なお、先日公表された21/6月末時点でのポートフォリオの実績は以下の通り、キレイ25%ずつの運用となっていることが見て取れます。
(DS:https://www.gpif.go.jp/operation/keieiiinkai5902.pdf)
冒頭であげた中国恒大集団への投資はポートフォリオの中でいえば、海外株式と海外債権に分類されるものですが、こういった企業に対しても広く分散投資が実践されていたということが今回のニュースからは見て取れるわけです。
なお、投資総額97億円というのは、金額だけで見れば確かに相当な額ですが、GPIFの運用総額は20年度末時点で186兆1,624億円であり、ポートフォリオに占める割合は0.005%と、即時に大きな影響が与えられる水準にはないということが言えるのではないでしょうか。
GPIFのポートフォリオの推移
GPIFのWEBサイトには先に挙げたポートフォリオの目標に加え、私たち国民が十分に理解を出来るように、様々な情報が開示されていますが、その1つに過去の基本ポートフォリオの推移に関する情報が開示されています。
以下の表は、基本ポートフォリオの推移を示しており、最初に策定された2006年から基本的には5ヵ年周期で基本ポートフォリオの見直しが行われることとなっていますが、実際には、市場環境に変化等に応じて、5ヵ年の周期の中においても適宜修正がされていることが見て取れます。
期間 | 国内債権 | 国内株式 | 外国債券 | 外国株式 | その他 | ||||||
06年4月-10年3月 | 67% | 11% | 8% | 9% | 5% | ||||||
13年6月-14年10月 | 60% | 12% | 11% | 12% | 5% | ||||||
14年10月-20年3月 | 35% | 25% | 15% | 25% | – | ||||||
20年4月- | 25% | 25% | 25% | 25% | – |
こちらの推移から読み取れるのは、策定当初は国内債権に集中した運用を行っていたのに対して、徐々に外国債券や外国株式からなる海外資産へと地域の分散投資が浸透していることが分かります。
また、国内においても債券中心から株式の比率を挙げるように推移してきたことがみてとれますが、その背景としては『デフレ脱却など、長期的に経済・運用環境が変化し、物価・賃金の上昇が想定される中で、従来の国内債券中心のポートフォリオでは、年金財政上必要な運用利回りを達成することは困難と判断』したことがGPIFのWEBサイトでは言及されています。
他国の年金基金との比較
また、同WEBサイトには、GPIFと他国の年金基金との比較の情報が開示されています。
以下は、運用額の大きい他国(CalPERSEは米国カリフォルニア州)における年金基金の運用ポートフォリオとの比較が掲載されています。
こちらをご覧いただくとわかるように、GPIFは他国との比較で、ポートフォリオに占める債権の割合が非常に高いことが見て取れます。
この4区分を25%ずつ組み入れるというポートフォリオの背景として、『運用目標を満たしつつ、最もリスクの小さいポートフォリオを選定したもの』とGPIFは説明していますが、他国との比較でリスク許容度が低いということがこの運用方針からは見て取れます。
その結果が以下のグラフに表れていますが、債権比率が高いということは、『〇〇ショック』と呼ばれるような株価の急落局面においてはその影響を低く抑えることが出来るため、他国の年金基金との比較で各年の収益率の振れ幅を小さく抑えられていることが見て取れます。
この考え方は、最近でこそ投資がブームとなりつつありますが、そもそも高齢者を中心とした投資嫌いという風潮がある日本の国民性ともマッチした非常に優れたポートフォリオを呼べるのではないでしょうか。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
日本で生活をしている日本人として、年金は切っても切れない関係にありますが、私たちの年金がどのようにして運用されているのかを知ることは、運用方針に対する意見を持つうえで非常に重要であると言えるのではないでしょうか。
特に『年金なんてあてにできない!』と考えている方にとっては、確かに年金を過信しすぎることは危険なのかもしれませんが、運用実績や規模を知ることで、年金に対する見方も少しは変わってくるのではと筆者は考えます。
それではまた。
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