実は日常にあふれている減価償却の考え方 – 固定資産②【簿記3級解説#12】

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どうもこんにちは、じょんです。

前回解説した固定資産の取得・売却に続き、今回は『減価償却』について解説していきます。

この減価償却、簿記の初学者にとっては聞いたことがない言葉かもしれませんが、
実は普段皆さんが生活をする中で使っている考え方なのです。

今回はその減価償却について解説を進めていきます。

減価償却の考え方

まずはこの『減価償却』とはなんなのか?についてですが、
『固定資産の価値の下落に伴い、会計上の資産の金額を減少させる手段』と言えます。

これだけだと理解が難しいでしょうから、実例を挙げて説明します。

例えば工場で使用する機械設備を1億円で購入した場合、
前回の解説の通り固定資産1億円が資産として計上されるわけですが、
機械設備は使用されるに従い、もしくは時間の経過に伴いその価値は徐々に下がっていきます。

新品の設備と10年間使用した設備とでは、その価値は大きく違うことは皆さんもイメージ出来るかと思います。

では、この価値の減少をどのようにして会計上反映させるべきかが論点となりますが、
ここで登場するのが『減価償却』です。

減価償却の手法

減価償却には複数の種類があるのですが、簿記3級では『定額法』という種類のみが試験範囲に含まれます。

この定額法ですが、一定の年数に渡り、毎期定額の価値が減少していくという前提の下、会計への反映を行う手法のことを指します。

例えば先ほどの1億円の機械設備の場合、仮に10年間の使用によって価値が0になるという前提を置けば、
毎年1,000万円ずつ価値が減っていくことになります。
(試験においてはこの10年間等の過程は問題文に記載されています)

ではこの減った価値については仕訳においてどのように取り扱われるのかですが、
結論からいうと、この価値の減少分は毎期の『費用』として取り扱われます。

機械設備を購入して使用するのはあくまで、そこから製造される製品を販売して売上を計上するためですから、
売上のために要した支出として機械設備への投資額は費用として認識すべきということになります。

一方で前回の解説にて取り上げた通り、固定資産は購入した際には一度資産として認識されますが、
それを時間の経過とともに費用に振り替えていく作業、それこそが定額法による減価償却の実態なのです。

仕訳で表すと以下の通りです。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
減価償却費 1,000万円 減価償却累計額 1,000万円

上記仕訳の借方にある『減価償却費』というのが減価償却を行った際に生じる費用科目に該当します。

一方貸方にある『減価償却累計額』について、

『あれ?貸方は機械装置じゃないの?』

と思われた方は仕訳の考え方の理解が進んでいる方といえるでしょう。

実は固定資産を減価償却する場合、その金額は直接、機械装置等の資産項目から控除されるのではなく、
減価償却累計額という資産の控除科目を用いて、間接的に控除される点に留意が必要です。

例えば、先の機械装置を例に挙げた場合、購入後3年間が経過した際の減価償却費の累計は3,000万円ということになりますが、
貸借対照表上は、機械装置1億円の直下に、『機械装置減価償却累計額』等の科目がマイナスの3,000万円と記され、
その差額が、実際の価値である7,000万円を示すということになるわけです。

なぜ減価償却が必要なのか?

そもそもなんでこんな面倒なことをするのか?という背景ですが、
固定資産はその性質から、長期間の使用が事前に想定され、
つまりは投資額は投資・購入した一時点だけで回収がされるというわけではないのです。

先の例では機械設備の投資額1億円は向こう10年間の使用を前提として購入していますので、
購入した年度に1億円の費用を計上してしまうと、それに見合う売上高はまだ計上されていませんから、
投資のタイミングと投資の成果を得るタイミングとが見合わず、費用だけが多額に先行して計上される結果、
購入した期の利益が大きな赤字となってしまうわけです。

それでは、本来投資を行ったことによる成果が会計上適切に反映されず、
また、税務上の観点からも投資時の税務上の利益がマイナスとなり適性な税金が徴収出来ませんから、
何等かの前提を置き、一定の期間にわたり一部ずつ費用として認識していくことが求められているのです。

この、投資の成果と投資のタイミングとを見合わせるべきとする考え方を会計の世界では『費用収益対応の原則』と呼びます。

減価償却だけではなく、様々な科目において使われる考え方ですので、是非覚えてしまいましょう。

今回のまとめ

いかがでしたでしょうか。

実はこの減価償却や費用収益対応の原則については、皆さんも日々生活をする上で取り入れている考え方であり、
例えば、普段は買わないような10万円のダウンジャケット、1年間しか使わないのであれば、
『高すぎて買えないなぁ、、』
となるわけですが、とてもモノが良くて10年間使えると想定される場合には、
『1年間あたり1万円の支出と考えればそこまで高くはないかも!?』
と購入される方も少しは増えるのではないでしょうか?

同じように、高い買い物をする場合には、それをいつまで使うことになるのか、
という点も踏まえ、その値段が高いのか、安いのかを判断される方は多いと思います。

今回解説した減価償却はまさにその考え方を会計に反映する際の手法ということで、
実は考え方自体は非常に身近にあるということに気づいていただければ幸いです。

それではまた。

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