『租税公課』という異質なネーミング – 税金【簿記3級解説#21】

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どうもこんにちは、じょんです。

今回は、損益計算書の勘定科目の内、これまで取り上げていなかったものについて、簡単に概要を解説していきます。

今回のポイントは以下の通りです。

  • 『法人税等』は税引前利益に税率を乗じて計算する
  • 『消費税』は1年を通じて受け取った金額と支払った金額の差額を納める
  • 固定資産税は『租税公課』として費用処理する

法人税等

法人税等の内訳

私たち個人が支払っている税金ですが、皆さんはどれだけの種類を挙げられますか?

恐らく消費税や所得税は誰しもが支払っているでしょうし、不動産を所有している方であれば固定資産税も支払っているでしょう。

個人と同様に企業も、様々な税金を支払っていますが、その代表格といえるのが、企業の儲けに対して課される税金である『法人税』です。

また、法人税の他にも、企業は事業所が在する自治体に対して『住民税』を、事業を行うことに対する『事業税』を支払うことも求められており、『法人税』『住民税』『事業税』をまとめて『法人税と会計の世界では呼ばれています。

なお、この税金は損益計算書において費用と同様に取り扱うことになりますが、損益計算書においては『法人税、住民税及び事業税』と表現されることが一般的です。

法人税等の計算方法

次に法人税等の計算方法について、税金の種類毎、及び自治体毎にそれぞれ計算方法は異なりますが、大前提として企業が稼いだ利益に対して税率を乗じることで算出されるものとして、以下の算式をイメージしてもらえれば簿記3級の勉強上は十分かと思います。

法人税等の金額 = 税引前利益 X 税率

例えば先に挙げた損益計算書の例でいうと、『税引前利益』2,000に対して、税率が30%との前提において、『法人税、住民税及び事業税』の金額は600(= 2,000 X 30%)と計算しています。

法人税等の仕訳パターン

先の例で法人税等が600と計算されていますが、これを仕訳にすると以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
法人税等 600 未払法人税等 600

ここで注目していただきたいのは『法人税等』が借方にきている点で、税金というのは企業からすれば外部に対する支払としての性質から費用項目に準じた取り扱いが求められているのです。

一方、貸方には『未払法人税等』という負債項目が使われていますが、企業の法人税等は会計年度が終了した後、原則として2カ月以内に支払うことが求められており、例えば3月決算の企業であれば5月末に支払うことが多く、決算においては、一旦未払いの形で仕訳を計上することになるわけです。

なお、『法人税等』は決算修正等を経て『税引前利益』の数字が確定して始めて計算をすることができる性質から、決算整理仕訳の1つとして決算時に処理をすることになります。

法人税等の中間納付

法人税等に関する最後の論点として『中間納付』というものがあります。

勘のいい方ならなんとなく想像がつくかもしれませんが、法人税等は国や自治体に対して、年1回税金を納付すればよいというわけではなく、一部の例外を除き、年度の中間時点で、年間での法人税等の見積額の半額を納める必要があるのです。

計算方法は以下の2通りがありますが、筆者の感覚としては『予定申告』を行っている企業が多いという印象です。
理由はシンプルで仮決算を行うには相当の手間がかかるというデメリットがあるからです。

  • 『予定申告』:前年度の法人税等の金額 X 1/2
  • 仮決算にもとづいた申告:半期時点で仮決算を行い、厳密に法人税等の金額を計算する
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中間納付された税金というのは、年度決算において支払う税金の仮払としての性質を有していますから、仕訳は以下のようになります。
中間納付額300は先の例における法人税等600の1/2相当である300としています。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
仮払法人税等 300 現預金 300

消費税

消費税の考え方

次に『消費税』ですが、消費税は負担者と納税者とが異なる『間接税』としての性質を有しています。

どういうことかというと、私たちが普段コンビニで商品を買った際に消費税もあわせて支払いますが、国や自治体に対して消費税を直接支払うのはコンビニであり、負担者(私たち)と納税者(コンビニ)とが一致せず、コンビニが私たちの税金を間接的に支払っていることから、『間接税』と呼ばれています。

余談ですが『酒税』や『たばこ税』なんかも『間接税』に該当します。

消費税納付額の計算方法

話を戻しますが、コンビニからすれば、私たち最終消費者から消費税をいわば預かっているわけですが、一方でコンビニは商品のベンダーに対して仕入時に消費税を支払っています

そのため、消費税法においては、例えば上の例におけるコンビニが納めるべき消費税額は以下のように計算されます。

消費税の金額 = 売先から受け取った消費税 – 買先に支払った消費税

例えば税抜きで100円のモノを仕入れ、税抜き150円で販売した場合、消費税率が10%であれば売先からは15円(= 150円 X 10%)を受け取り、買先には10円(= 100円 X 10%)を支払っていますから、差額の5円を納める必要があるのです。

そしてこの納付は、取引の都度行うのではなく、1年間の取引を集計して差額を計算した上で行われます

なお、法人税等と同様に中間納付もあるのですが、ここでは説明を割愛します。

消費税の仕訳パターン

これまでの解説においては消費税を考慮しない形での仕訳を解説してきましたが、実務では例えば商品売買の都度、消費税を加味した仕訳が計上されますので、仕訳のパターンを覚えることは非常に重要です。

まずは消費税を支払った際の仕訳ですが、100円の商品を消費税10円込みで掛けで仕入れた際の仕訳は以下の通りです。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
仕入 100円 買掛金 110円
仮払消費税 10円

『仕入』勘定自体は消費税抜きの100円にて計上されていますが、消費税部分が『仮払消費税』という勘定にて計上されていることが分かります。

これは先ほど説明した通り、消費税は1年間の取引を集計して差額を求めるため、期中においては、いくら支払ったのかを『仮払消費税』という勘定に記録していくわけです。

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反対に消費税を受け取った際の仕訳ですが、150円の商品を消費税15円込みで掛けで販売した際の仕訳は以下の通りです。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
売掛金 165円 売上 150円
仮受消費税 15円

先ほどの仕入の仕訳と同様に、『売上』は消費税抜きの150円で計上され、消費税部分は『仮受消費税』として計上されていることが分かります。

なお、このように、『仕入』や『売上』といった損益勘定に消費税部分を含まずに仕訳を切ることを簿記の世界では『税抜経理方式(ぜいぬきけいりほうしき)』と呼びます。

一方で、損益勘定に消費税部分を含めて仕訳を切ることを『税込経理方式(ぜいこみけいりほうしき)』と呼びますが、3級の試験範囲には『税抜経理方式』のみが含まれますので、ここでは詳細の説明を割愛します。

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さて話を戻しますが、消費税の支払のタイミングで『仮払消費税』と『仮受消費税』との差額の支払を行うことになります。

ここで、先に説明した仕入と売上の2本しか年間の取引がなかった場合には、以下の仕訳を支払のタイミングで計上することになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
仮受消費税 15円 仮払消費税 10円
現預金 5円

預かった消費税15円と、支払った消費税10円との差額である5円を支払っていることが見て取れます。

その他の税金

最後に簿記3級の試験に向けて覚えておくべき税金費用としては以下が挙げられます。

  • 『固定資産税』:固定資産を保有していることに対して課される税金であり『租税公課』として取り扱う
  • 『印紙税』:契約書など特定の資料を作成する際に課される税金であり『租税公課』として取り扱う
  • 『不動産取得税』:不動産を取得する作成する際に課される税金であり固定資産の取得原価に含める

上で説明した『租税公課(そぜいこうか)』というのは、損益計算書において、主に「販売費及び一般管理費」に区分される費用項目であり、法人税等以外の税金を処理する際に用いられる勘定科目です。

仕訳の例ですが、例えば固定資産税10万円を現金で納付した際の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
租税公課 10万円 現預金 10万円

いたってシンプルですね。

今回のまとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は税金について取り上げましたが、税金というのは私たちの生活において、基本的には切っても切れない関係にありますから、少しでも興味を持たれた方はぜひ個人の所得税なんかについても勉強してみることをオススメします。

税金というのは体系的に勉強している方が少ない反面、勉強してしまえば節税など相応のメリットを得られますから、簿記に加えてぜひ学んでみてはいかがでしょうか。

それではまた。

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