『清算表』ではなく『精算表』 – 決算【簿記3級解説#22】

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どうもこんにちは、じょんです。

今回は、いかなる企業も避けては通れない『決算』について解説していきます。

今回のポイントは以下の通りです。

  • 『前T/B』+『決算整理仕訳』=『後T/B』
  • 期末時点で未使用の切手・収入印紙は『貯蔵品』に振り替える
  • 『後T/B』の純損益は『繰越利益剰余金』に振り替える

決算の流れ

決算数値の成り立ち

私たちが普段目にする貸借対照表や損益計算書等の財務諸表数値は期中に積み上げられた仕訳に対して、決算時に決算整理仕訳を加えることで成り立っています。

この流れをかいつまんで説明すると、企業は決算時に、まず期中に積み上げられた仕訳を集計する作業を行います。

この集計作業により、各勘定科目毎の決算整理仕訳を反映させる前の数値の集計表が出来上がるわけですが、この表のことを『決算整理残高試算表』、もしくは残高試算表を意味する英語であるTiral Balanceの頭文字をとって、『前T/B』と呼びます。
ちなみに『T/B』は『ティービー』と読みます。

そしてこの『前T/B』に対して、決算整理仕訳を反映させることで、各勘定科目毎の決算整理仕訳反映後の数値の集計表、すなわち『決算整理残高試算表』もしくは『後T/B』が出来上がるわけです。

前T/B + 決算整理仕訳 = 後T/B

この『後T/B』に記載されている各数値は最終的な決算数値となり、この数値の表示形式を変えたものが貸借対照表や損益計算書といった財務諸表となるのです。

簿記3級の試験においては、『前T/B』が既に与えられた状態で、問題文からどのような決算整理仕訳を切るべきかを考えさせた上で、『後T/B』を完成させるという形で問題が出題さえれるケースが多いです。

ですから、試験対策としてはこれまでにも解説をしてきた決算整理仕訳を理解することが重要となるのです。

決算整理仕訳の種類

改めて復習ですが、簿記3級の範囲に含まれる決算整理仕訳の種類について、日本商工会議所が公表している出題区分表においては以下の項目が明記されています。

  • 当座借越の振替
  • 商品棚卸
  • 貸倒見積り
  • 減価償却
  • 貯蔵品棚卸
  • 収益費用の前受/前払・未収/未払
  • 月次決算の処理

この内、これまでの解説において取り上げていなかった『貯蔵品棚卸』についてここで解説しておきます。

『税金』の解説において紹介した印紙税、こちらは購入した際に以下の仕訳にように費用処理することが一般的です。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
租税公課 1,000円 現預金 1,000円

この点、収入印紙を必要な度に買いに行くのは手間ですから、将来分を買い溜めしておくことは実務では良くあると思います。

例えば、上の仕訳では収入印紙を1,000円分購入したことを表していますが、期末時点で500円分はまだ使用されずに手許に残っていた場合、期中に使用されたのは500円分だけですから、費用が過大に計上されることになり問題です。

ですから、期末時点でいくらの収入印紙が手許に残っているのかを棚卸し、残額分を資産項目の勘定である『貯蔵品』として記録することが求められています。仕訳は以下の通りです。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
貯蔵品 500円 租税公課 500円

これにより、年間の租税公課は500円、期末の貯蔵品は500円と実態と整合させることが出来るわけです。あまり難しくはないですね。

収入印紙と同様に、郵送に用いる切手なんかもこの処理の対象となります。通常、切手については購入時に『通信費』等の科目にて費用処理するのが一般的ですが、期末時点で手許に残っている切手については、『貯蔵品』勘定に振り替える処理を行うわけです。

純損益の繰越利益剰余金への振替

さて、決算整理仕訳を反映した後、最後に必要となるのが、純損益の繰越利益剰余金への振替です。

作業自体はいたってシンプルで、作成した後T/Bにおける収益項目と費用項目との差額をもって『当期純損益』を算出し、純損益がプラスなら純資産項目である『繰越利益剰余金』に加算(貸方計上)、純損益がマイナスなら減算(借方計上)するのみです。

以前の解説で用いた以下の損益計算書をご覧ください。

ここでは、当期純損益が1,400のプラスと出ていますから、『繰越利益剰余金』勘定の数値に1,400を加算するわけです。

これにより、純資産の解説において説明したように、『繰越利益剰余金』が利益の累計額を示すことになるのです。

精算表とは

さて、最後に『精算表』と呼ばれる資料について解説していきます。

『精算表』というのは、先ほど解説した決算の流れを追える形で数値をまとめたものであり、以下のようなイメージのものです。

左から前T/B数値、決算整理仕訳数値と並び、損益計算書と貸借対照表数値への繋がりを追える形となっているのが見て取れるかと思います。

補足すべき点としては右下オレンジでハイライトした『当期純利益』について、先ほどの説明で繰越利益剰余金に振り替えると説明しましたが、精算表上では、『当期純利益』の貸方に計上します(『当期純損失』の場合は借方)。

これは、損益計算書数値における当期純利益600(=10,000 – 6,900 – 2,000 – 500)を貸借対照表に振り替えたことを分かりやすく示すために、このような見せ方となっているわけです。

簿記3級の試験においては、前T/Bの数値までが与えられた状態で、決算整理仕訳より先の情報を問題文をもとに埋めさせる形式での出題がなされるケースが多いですので、この形式にもぜひ慣れてしまいましょう。

今回のまとめ

いかがでしたでしょうか。

本日解説した決算の流れ、そして各種の資料は、経理に携わる方であれば誰もが内容を把握しておかなければならない程に重要ですので、試験対策ということだけではなく、既に経理部で働いている方等はぜひ知っておいて頂きたい領域です。

逆にこの決算の領域を覚えておくことで、経理業務の全体間を把握でき、日常の作業というのがどこに繋がっていくのかを知ることになりますから、ぜひ身につけて頂ければと思います。

それではまた。

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