- 公認内部監査人に興味を持たれている方
⇒公認内部監査人試験の概要を解説します - 転職のために公認内部監査人の取得を検討されている方
⇒筆者が実際に取得して感じた転職での優位性について解説します - 独学で公認内部監査人試験の勉強をしている方
⇒独学で受験・合格した筆者の経験をお伝えします
どうもこんにちは、じょんです。
昨今増加傾向にある不正会計や不祥事。
その影響から注目を浴び始めているのが内部監査であり、その内部監査の専門家である証が『公認内部監査人』の資格です。
筆者も先日取得したこの公認内部監査人について、今回はその概要や資格取得に向けた筆者の体験をお伝えいたします。
公認内部監査人の概要
公認内部監査人とは
まずは公認内部監査人の概要ですが、日本公認内部監査協会のWEBサイトにおいて以下のように説明されています。
企業を取り巻く経営環境の激変の中、近年内部監査の重要性が認識されるようになり、内部監査人の能力の証明に対する要求が高まりました。こうした状況から、IIAの日本代表機関である日本内部監査協会(IIA-Japan)では、1999年11月より世界水準の資格であるCIA資格認定試験の「日本語」受験を実現しました。
CIA(Certified Internal Auditor-公認内部監査人)は、資格認定試験に合格し、実務経験等の要件を満たした者に授与される称号です。CIA資格認定試験は、内部監査人の能力の証明と向上を目的とした世界水準の認定制度で、世界約190の国と地域で実施されています。内部監査人の唯一国際的な資格であるCIAの称号は、業務に精通したプロフェッショナルとして経営者の信頼を得て、21世紀のグローバル社会を勝ち抜くための、最良の資格です。
内部監査という職は企業の内部から、その企業が適正な事業運営や財務報告を行っているのかを監査するものですが、監査法人や公認会計士が行う外部監査と異なり、その実施に資格要件はありません。
極論をいえば誰でも内部監査を行えるわけですが、それでは現実的に内部監査が有効に機能することを担保できないため、実質的にも客観的にも適正な内部監査が実施されるように作られた認証が公認内部監査人となります。
この公認内部監査人は国際資格であり、取得した資格は全世界共通で有効に取り扱われます。
ちなみに公認会計士は国によって従うべき会計のルールが異なることから各国独自に資格認証が行われています(日本の公認会計士資格と米国公認会計士資格は全くの別物です)。
ですからこの点では、公認内部監査人の方がより広く活用できるということがいえそうです。
資格取得者数
公認内部監査人の資格取得者数ですが、内部監査人協会(IIA)によれば、2021年時点では全世界で170,000人以上の方が取得をしているとのこと。
うち、日本における公認内部監査人試験の合格者は2021年3月末時点で約10,000人であることが日本内部監査協会より報告されています。
10,000人と聞くとそれなりに多い印象を持ちますが、日本の上場企業数は2022年9月22日時点で3,830社あり(日本取引所グループのWEBサイトより参照)、
企業によって内部監査に関わる人数は異なりますが、仮に5人と置くと、内部監査人の数は上場企業で19,150人(=3,830社×5人)となります。
また、非上場企業においても一定の規模があれば内部監査部もしくは同等の組織を構築することが一般的ですから、内部監査人の数と比べて公認内部監査人の数は足りていないということが言えるのではないでしょうか。
資格試験
次に資格試験の概要ですが、2022年9月時点では公認内部監査人試験は全3パートに分かれており、
それぞれを独立して受験し、全てのパートに合格して初めて公認内部監査人に登録することが可能となります。
パート概要 | 問題数 | 試験時間 | |||
パート1:内部監査に不可欠な要素 | 125問 | 2時間半 | |||
パート2:内部監査の実務 | 100問 | 2時間 | |||
パート3:内部監査のためのビジネス知識 | 100問 | 2時間 |
また、試験の合格点については以下のように公表されています。
CIA 試験パートごとの素点(正答数)は、250 から 750 までのポイントに換算されます。
CIA 試験の合格には、換算ポイントで 600 以上が必要となります。
この換算ポイントの概要は不明ですが、全体の75%程度を正解すれば合格という判定になるようです。
費用
次に公認内部監査人の資格取得に要する費用ですが、個人的にはここが受験に向けた一番のネックになるものと考えており、ずばり値段が他の試験に比べて顕著に高いのです。
以下、受験に必要な登録料及び各パートの受験料をまとめたものです(日本内部監査協会のWEBサイトより)。
パート概要 | IIA個人会員 | IIA個人会員以外 | |||
登録料(受験申請料) | 13,000円 | 27,000円 | |||
パート1受験料 | 35,000円 | 51,000円 | |||
パート2受験料 | 31,000円 | 47,000円 | |||
パート3受験料 | 31,000円 | 47,000円 | |||
合計 | 110,000円 | 172,000円 |
ご覧いただくとわかる通り、受験申請時に必要となる登録料、及び、各パートの受験料が明らかに高額であることが見て取れます。
なお、それぞれ、IIAの個人会員か否かで料金が異なっていますが、この個人会員へは年会費20,000円を支払うことで登録ができ、また、個人会員となることで機関紙の閲覧や研修会への参加といった特典も受けられるようなので、受験する年だけでも会員となることがお得のようです。(ちなみに個人会員にならなくても資格の取得は可能であり、筆者は個人会員になっていません)
筆者の実体験
ここからは、実際に公認内部監査人の資格を取得した筆者の実体験を説明していきます。
学習方法
公認内部監査人の勉強を始める上でまず悩むのが『独学か?それとも専門学校か?』という点です。
筆者の場合はコスパ重視でしたので出来れば独学でと考えており、念のため程度に確認したのが、Googleでの「公認内部監査人」の検索上位に出てくるのがアビタスという資格の専門学校でした。
同サイトを確認すると、2022年8月時点での公認内部監査人合格者が3,609名とのことで、実に全合格者数の1/3はこのアビタスの口座を受講していたことになります。
しかし本当に驚くべきは合格実績ではなく受講料の方で、コースにより料金は変わるものの、約250,000円もかかるとのこと。
これを見て選択肢は独学1本に絞られました。
独学で行くと決めた以上、まずは学習対象となるテキストを探しにAmazonへ。
すると、「公認内部監査人資格認定試験対応」と丁寧にかかれた基本テキストなるものを発見。
7,480円とコチラも驚きの価格でしたがアビタスの口座を受けるよりはと思い即購入。
自宅に届き冒頭のお話を読んでいると素晴らしい言葉に出会います。
なんと「このテキストを3周程度回せば、試験合格に必要となる程度の知識は身につく」というのです。
自分に都合のいいことは信じやすい筆者は、当然にこの言葉を信じて勉強を開始。
勉強方法はいたってシンプルで、テキストを読み、テキスト内に含まれている練習問題を解くのみ。
2周目以降は、練習問題でつまづいた点や、自身の理解が浅いと感じた領域(筆者の場合はIT周り)を重点的に読む。
結果、試験の取得まではこのテキストを5周程回しましたが(心配性な筆者は3周では止められませんでした)、このテキスト以外の参考書は一切使用しませんでした。
勉強時間
筆者の場合は、1日30分の学習をまる3か月間継続しましたので、計45時間というのが実際に要した時間となります。
この点、転職サイトのen worldによれば、公認内部監査人の標準的な学習時間は300~500時間とのことですが、先に触れたテキストを3周回すだけであれば絶対にここまでかかりません。
筆者は公認会計士の資格を取得しており、内部監査ではないものの、外部監査業務の知見があることから、初学者と比べてアドバンテージがあることは確かだと思います。
ですが、テキストの冒頭分の通り、確かに3周をじっくりと回せば十分に試験に合格できる水準に届くように感じましたし、その意味ではせいぜい100時間というのが合格水準に到達するのに要する時間なのではないかというのが筆者の実感です。
もっとも、初学者の方が内部監査の実務に飛び込むことを目的として学習をされるのであれば、専門学校の口座を受講して、講師や受講生の方々から生の声を聴きながらイメージを膨らませていくというのはアリだと思います。
なお、公認会計士の資格を取得されている方や、実際に内部監査部で働いており実務を把握されている方が受験をされる場合には、おそらくは30時間程度の学習でも合格は狙えるかと思います。
試験当日
公認内部監査人の試験は現在では自宅でも受験が可能となっていますが、筆者は試験中に子供が乱入することを避けるために市ヶ谷のテストセンターで受験しました。
テストセンターでの受験は会場に持ち込めるモノが厳しく定義されておりますので、事前に十分にチェックしてから望んでください。
コロナ対策の一環として当日はマスクの着用が必須となっておりましたが、入場前にはマスクの裏側まで書き込み等がないかチェックされていました。
なお、筆者はドライアイなので目薬の持ち込みを当日受付でお願いしたところ、問題なく持ち込みを許可されました。
また、他のテストセンターではわかりませんが、市ヶ谷では受付に耳栓が容易されており、そちらを利用されている受験者の方もいらっしゃいました(デスクにはヘッドホンも用意されていました)。
市ヶ谷の会場はPCが設置されたデスクが並んでいる小部屋で、隣の席との間隔は狭く、ちょっとしたパーテーションで仕切られただけでしたので、神経質な方は隣の音が気になるレベルかもしれません。
筆者が感じた試験当日の留意点としては、わからない問題があっても決して焦らない、パニックにならないことです。
この試験、国際資格だけあって、問題は海外において作成され、それを日本語に訳して出題されているものと思われますが、翻訳があいまいで問題分が頭に入ってこないものがいくつもありました。
また、先に触れたテキストには記載されていない問題も多く出題されていましたので、正直筆者には解答できない問題もありました。
そんなときに焦ったり、パニックを起こしてしまうと、本来解けるレベルにある問題にも悪い影響が出てしまいますから、少し考えてもわからない問題は思い切って捨てることが大切かと思います。
ちなみに受験対策のサイトを拝見していると、「1問あたりの解答時間は50秒(=問題数÷試験時間)しかないから、ゆっくり解いていると時間が足りなくなる」という趣旨のコメントをされている方もいらっしゃいますが、時間を過度に心配する必要はないように思います。
問題によっては10秒で解答できるものもありますし、わからない問題は捨てることで、時間が足りなくなるという事態は回避できるかと感じました。
さて、全ての問題を解き終わって会場を出ると、その場で仮の試験結果を教えてもらえます。
筆者の場合は、捨てた問題、翻訳が腑に落ちず解答に自身がない問題も多くありましたので結果を知る際に少し緊張していたのですが、何とか全パート1回で合格でき、再受験による追加コストを負担せずに済みました。
転職活動における優位性
最後に公認内部監査人資格が転職でどこまで活きるのかという点です。
筆者は企業の内部監査部を転職先の候補として転職活動を行った経験があり、その際には公認内部監査人の資格を取得していることも説明していましたが、資格はプラスアルファ程度にしか見てもらえず、それよりも内部監査の経験が非常に重視されているように感じました。
資格は知識を持っていることの証にはなりますが、それを実務で活かせる証とはなりません。
企業によって対応は異なるかとは思いますが、結局中途採用の人材に求めることは即戦力として働いてくれることであり、資格より経験を重視する点は頷けるかと思います。
ですから、もし新しいキャリアとして内部監査の道に進むことを目的として公認内部監査人の資格を取得されるのであれば、資格取得後にすぐに転職というのではなく、まずは今務めている会社内の内部監査部に異動して実戦経験を積んだうえで転職をされるのが望ましいでしょう。
内部監査というのはある種専門職にあたりますから、資格を取得していることを売りにすれば、企業内での内部監査部への異動はより現実的になるのではないでしょうか。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
これからますます重要性が増してくることが想定される内部監査の専門資格として、特にお金の面が気にならないようであれば、是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
それではまた。
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