どうもこんにちは、じょんです。
今回はAmazonで評価の高いこちらのビジネス書を読んでみました。
著者の木下勝寿氏は、本書で取り上げられている「北の達人コーポレーション」の代表取締役社長ということで、2017年の株価上昇率日本一を達成した企業のリアルな経営ノウハウが本書には詰まっています。
なお、本書の主な内容としては、「北の達人コーポレーション」において実際に導入されている超効率的経営の手法が細かく説明されているのですが、筆者の感覚としては、オーソドックスな管理会計の手法が大分部を占めており、既に管理会計を理解している方にとってはあまり目新しい話はないという印象を受けました。
一方で、木下氏の考え方自体については、「なるほどな」と感じる部分もあり、今回は筆者が考えさせられた点について解説をしていきます。
本書は以下のような方には是非オススメです。
- 「管理会計」って何?という方
⇒「北の達人コーポレーション」の実例を通して管理会計の手法が学べます。 - 将来経営者となる道を考えている方
⇒高利益率経営を率いる木下氏の考え方を学べます。
同じ利益なら売上は少ない方がいい
今日ではあまり聞かなくなってきましたが、『売上至上主義』という言葉を皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか?
『売上至上主義』というのは読んで字のごとく、『企業は売上を伸ばすことが全て!』という考えに基づき、なんとしても売上を増やすべくリソースを投じることを指します。
この売上至上主義、必ずしも悪いとは言い切れませんが、昨今の流れとしては、売上より利益やキャッシュフローを重視する傾向に推移してきていると筆者は感じています。
例えば売上高を伸ばすために多額の広告宣伝費をかけた場合、売上は確かに上がるかもしれませんが、広告宣伝費が利益を圧迫し、結果として、利益水準は小さくなるという本末転倒な状況も往々にしてあるわけです。
本書ではキャッシュフローについては取り上げられておらず、利益を重視する経営であると筆者は読み取りましたが、木下氏に言わせれば、「同じ利益なら売上は少ない方がいい」と触れられています。
これはつまり、資金効率の観点からの考えであり、利益が100円と同じ場合でも、売上が1,000円のA社と10,000円のB社の場合とでは、以下のように利益率が大きく異なってしまうのです。
A社:10%(=100円/1,000円)
B社:1%(=100円/1,0000円)
言い方を変えれば、100円の利益を得るために、A社は1,000を売り上げれば良いのに対して、B社は10,000円を売り上げなければならず、A社の方が10倍効率の良い経営が実行できていると言えるわけです。
正直このあたりの考え方というのは多くの企業は十分に理解していると思いますが、企業規模が大きくなり、株式上場まで果たしてしまうと、目に見える成長として売上偏重に舵を切ってしまうということは、生じ得る話かと思います。
そんな中で、いたずらに売上を伸ばすのではなく、利益に貢献する場合にのみコストをかけるという明確なポリシーを持った経営を継続されている点は非常に理に適っているなと感じました。
高利益率経営は納税を通じて社会の役に立つ
筆者が本書を通じて一番驚いたのは、木下氏が『納税は社会の役に立つ』という考えの下、社員に対しても「自分が日本を支えているという自負を持ってほしい」ということを明確に伝えている点です。
日本の法人税法上、利益が大きい企業はそれだけ法人税を支払うことになりますが、企業からすれば税金というのはいわば費用としての一面を持っていますから、あの手この手で税金負担を減らすように行動しているわけです(時には非合法的な手法にまで走る企業もあるくらいです)。
この点、「北の達人コーポレーション」においては、高利益経営を行うことで、多く納税を行った分だけ社会の役に立っているという考えを持たれているのは、企業のトップとしてはやや珍しい部類に入るのではないでしょうか。
株式会社の所有者は株主であり、株主への還元を第一に考えるという立場からすれば、税金支出を抑える経営は理に適っていると言えますが、木下氏のように、税金を払うことにも意義を見出せるというのは、本人の人柄による部分も大きいと思いますが、他の経営者にもぜひ浸透していくと望ましいですね。
特に最近ではSGDsなりESG投資なり、環境などに配慮した経営を行うことが求められる時代になってきましたが、表面的に環境を配慮すればよしというのでは決してなく、心から環境への配慮を積極的に行える経営者というのは、木下氏のような方なのではないかと筆者は感じました。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
筆者も会計士として、企業の数字を見る際には税金は低く抑えるべき項目として、節税をできる余地がないかという目で見てしまうのですが、税金を払うことは社会貢献の一部という捉え方をしている点には改めて驚かされました。
企業は財やサービスの提供により社会貢献を行うことができる一方で、納税も社会貢献に繋がるという点は、経営者として一考に値する価値観なのではないでしょうか。
それではまた。
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