どうもこんにちは、じょんです。
今回も勘定科目の1つである『売掛金』について解説していきます。
少し解説が長くなりますので、3回に分けて解説します。
以前の解説でも少し触れましたが、皆さんこの売掛金と言うものは何か覚えていますか?
お店でモノを買う際には、基本的には商品と交換にお金を払うことになりますが、
会社同士の取引の場合には、この商品の受け取りと代金の支払いとでタイミングが一致しないことが一般的です。
どういうことかと言うと、大抵の場合には会社同士での取り決めの中で、
例えば1か月分の取引に係る代金は、まとめて翌月末、もしくは翌々月末等にまとめて支払うというケースが多いのです。
このように商品を販売した側の会社からすると、将来商品を購入した会社からお金を受け取ることができるわけですが、
お金を受け取る権利のことを『売掛金(うりかけきん)』と呼びます。
仕訳のパターン
売掛金に関連する仕訳のパターンですが、基本的なものは以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
売掛金 | 10,000円 | 売上 | 10,000円 |
借方 | 貸方 | ||
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
当座預金 | 10,000円 | 売掛金 | 10,000円 |
1つ目の仕訳は、商品を販売した際に、代金を回収する権利である売掛金が借方に計上され、
2つ目の仕訳では、予め決められた期日において、その権利が回収されたということを表しています。
なお、売掛金は以前に解説した勘定科目の5つの区分でいうと『資産』に該当します。
将来お金に代わるもの、ということで資産に区分されるわけです。
この仕訳のパターンは決して複雑ではないかと思います。
そしてここからは、売掛金に関連する個別の論点について説明を進めていきます。
貸倒引当金
上で説明をしたとおり、売掛金というのは商品を販売した会社が購入した会社から、
将来に代金を受け取る権利となるわけですが、これ必ず回収できるとは限らないのです。
想像してもらえばわかると思いますが、例えば販売した先の会社が倒産してしまった場合、
売掛金は将来倒産した会社から回収することが難しいというわけです。
このように、売掛金が回収できなくなると言うことを『貸し倒れ(かしだおれ)』と呼びます。
(ちなみにお金を貸した際に使われる『貸付金』という勘定科目についても貸し倒れの概念が適用されます)
会社からすれば、この貸し倒れはいつ発生するかはわからないわけですが、
会計帳簿上、急に多額の貸倒が記録されると、会計帳簿を信頼している人間からすると、
なんで急に貸し倒れが発生したのか?
他の売掛金も同様に貸し倒れたりはしないのか?
と不安になってしまうわけです。
そこで簿記の世界ではこのようなサプライズを避けるため、
決算のタイミングにおいて、将来貸し倒れが発生する可能性を見越して、
売掛金の金額に一定の率を乗じて、貸し倒れの見積もり金額を算出し、
実際に貸し倒れが発生する前に会計帳簿への反映することを求めています。
この見積もり計上されたものは『貸倒引当金(かしだおれひきあてん))』と呼ばれます。
実務ではよく『貸引(かしびき)』と略して使われます。
なお、貸倒引当金は資産の控除項目として、貸借対照表上は借方にマイナス計上される点も特殊ですので、
併せて覚えてしまいましょう。
以下が、決算時における貸倒引当金の仕訳例です。
借方 | 貸方 | ||
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
貸倒引当金繰入額 | 10,000円 | 貸倒引当金 | 10,000円 |
借方の『貸倒引当金繰入額(かしだおれひきあてきんくりいれがく)』は費用に分類される勘定科目の区分で、
つまりは将来回収が出来ない金額を、回収が見込まれないと判断されたタイミングで費用として認識してしまうということになります。
ちなみに貸方の『貸倒引当金』は資産の控除項目に該当します。
『実際に貸し倒れてないのに費用として認識されるのは早すぎませんか?』
そんな風に感じた方は簿記の理解が大分進んできているといえます。
ここで覚えていただきたいのは、簿記の考え方、特に費用の考え方の根底には
『発生主義』と呼ばれる簿記の大前提があるのです。
発生主義とは
この『発生主義』が何かというと、費用項目はその費用が発生したタイミングで認識をするというもの、
そして、発生したタイミングとは、費用が実際にお金で支払われたタイミングを指すのではなく、
実質的に計上すべき費用の源泉となるイベントが生じたタイミングと言えます。
先ほどの貸倒引当金についていえば、売掛金の一部が回収されない可能性が高まった(見積もられた)というイベントに対して、
高まった(見積もられた)タイミングで費用として認識する必要があるのです。
多くの場合、この貸倒引当金は、期末時点での売掛金残高に対し、
過去の貸倒実績等を基に見積もられた貸倒実績率を乗じることで計算されます。
例えば過去3年間の会計期間末における売掛金残高に対する貸し倒れた金額が占める割合の平均
といった具合に貸倒実績率を算出することが一般的です。
これまでの解説では、基本的には実際に生じた取引を実際の取引金額を基に仕訳を記録していたのに対して、
この貸倒引当金のように会社の見積もりに基づく数値も簿記では取り扱われるという点において、
貸倒引当金は簿記を理解する上での大きな壁の1つになりえるものと筆者は考えています。
是非、この考え方を理解して、その大きな壁を乗り越えていって頂ければ幸いです。
ちなみにこのように会社の見積もりが含まれる勘定科目については、実務上『見積項目』や『見積科目』なんて呼ばれるので、
この点も覚えておくとよいかもしれません。
今回のまとめ
いかがでしたでしょうか。
売掛金は基本的にはシンプルな勘定科目でありながら、
貸倒引当金は初学者には理解しづらい項目の1つですので、腑に落ちるまで繰り返し勉強しておくことが望ましいです。
今回のポイントは以下の通りです。
- 回収できないと見込まれる部分は貸倒引当金を計上する
- 貸倒引当金は発生主義に基づいて計上される
- 貸倒引当金は一般的には過去数年間の貸倒実績率の平均を当期末の売掛金残高に乗じて算出する
次は、売掛金の2回目として、貸し倒れや貸倒引当金の計上に関してもう少し掘り下げて解説していきます。
それではまた。
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