決算とは何か?(セールのことじゃないですよ)【簿記3級解説#5】

資格

どうもこんにちは、じょんです。

今回は、
『決算とは何か?』
について解説していきます。

皆さんも決算という単語は聞いたことがあるのではないでしょうか?

『決算セール開催中!』
『当期の決算は過去最高利益を計上しました』

どちらもテレビCMやニュースでよく耳にする表現ですが、
いずれの場合における決算は同じものを意味しています。

決算とは、

『会計期間を通じて記録された仕訳を集計し、必要な修正を行ったうえで、会計帳簿を締めること』

と表現出来ます。

さて、何をいっているのかさっぱりなあなた。

大丈夫です、これから順を追って説明していきます。

会計期間を通じて記録された仕訳を集計する

前回までの解説で、仕訳というのは日々の金銭的価値の動きを記録していくものだということは説明しましたが、
この会計期間を通じて記録された仕訳を集計する作業を決算の過程では行います。

例えば2020年4月1日から2021年3月31日を会計期間とする会社の場合、
2021年4月1日から数日をかけて1年間の仕訳を全て集計し、
勘定科目毎に1年間でどれだけの金銭的価値の動きがあったのかを把握、
その後2021年3月31日時点での資産・負債・純資産の金額、
及び会計期間における収益・費用の累積額を算出するわけです。

なお、会計期間は基本的には1年間と理解しておけばよく、
日本の会社の場合ですと、4月1日から3月31日を会計期間とする会社が非常に多いです。
(学校の卒業から新卒での入社までのタイミングとマッチしているので会社としても管理しやすいという実情もあります)

一方で、海外の会社のほとんどは1月1日から12月31日を会計期間としており、
日本のそれとは異なる点を覚えておくとよいかと思います。

例えば日本にオフィスがあっても、いわゆる外資系の会社であれば、12月31日を期末日とすることが一般的ですし、
純粋な日本の会社の中にも、海外の会社との整合を図る観点から12月末を期末日とするように、
会計期間を変更するケースが増えてきています。

最近では日本通運がこれまでの3月末を会計期間末としていたところ、
グローバルスタンダードに合わせるとの目的から12月末へと会計期間末の変更を予定しています。

https://www.nittsu.co.jp/press/2021/images/20210428-2.pdf

必要な修正を行う

さて、1年間に記録された仕訳を集計すれば決算の作業が終わるかというとそんなことはなく、
決算においては、集計された数値に対して必要な修正を加えていく作業が行われます。

詳細はまたの機会に説明しますが、例えば1年間の仕訳を集計した結果、
銀行預金が100万円であると計算されたとします。
一方で、期末日の銀行預金の残高を調べた結果、95万円しかなかったとすると、
差額の5万円については仕訳としての記録が漏れていた可能性があるわけです。
ですので、この5万円がどのように使われたのかを調べて適切な仕訳を追加で記録する必要があり、
こういった修正作業が決算においては行われます。

別の例を挙げます。

銀行からお金を借りている場合を想定します。
例えば100万円のお金を借りていて、1年間で2万円の利息を銀行に対して払わなければならない場合、
2万円という金銭的価値が会社から動くわけですからこれも仕訳として記録する必要があります。

ただこの2万円、いつ仕訳として記録するのがよいでしょうか?

実際にお金を支払ったタイミングでしょうか?

実は簿記の考え方では必ずしも実際に現金を支払ったタイミングと仕訳を記録するタイミングは一致しないのです。

この2万円は1年間お金を借り続けていることから発生しているわけですから、
実際のお金の移動はなくとも、支払わなくてはいけない利息の金額は1年を通じて徐々に増えている
という捉え方をするのです。

ここで、3月末を期末日とする会社において、利息の支払日が同じく3月末であれば、
結果として1年間を通じて発生した利息の要支払額と実際の支払額とは一致するため、
以下の仕訳を3月末に計上することで足ります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
支払利息 20,000円 現金 20,000円

一方で、お金を借りたのが10月1日で、3月末時点ではまだ6カ月しか過ぎていなかったらどうでしょうか?

先ほどの考え方によれば、6か月分お金を借りていたことに伴い、支払わなくてはいけない利息も一部(半年分)は発生している、
という捉え方をするわけです。
1年間で2万円ですから、半年分では1万円ですね。

ですので、3月末の決算においては、この1万円分の利息を費用として記録するわけです。
なお、費用の増加ですので借方に記録され、貸方は『未払費用』または『未払利息』といった負債に区分される勘定科目が使われます。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
支払利息 10,000円 未払費用 10,000円

このように、期末日をまたいで徐々に生じる性質の取引については、
日々の仕訳としては記録されないため、決算の過程で拾い上げて記録する必要があるのです。
なお、こういった期末日を跨ぐ取引を記録するための勘定科目を『経過勘定』と呼びます。
上の例でいえば『未払費用』や『未払利息』が該当します。

その他にも、決算特有の修正項目が複数あり、そういった仕訳は『決算整理仕訳』と呼ばれ、
簿記の試験においてもこの決算整理仕訳を作らせる問題が多く出題されます。

決算整理仕訳の詳細についてはまたの機会に解説します。

会計帳簿を締める

今回の解説の最後は会計帳簿を締めるというのがどういうことかについてですが、

『会計期間の記録を終えて追加での修正を行わないようにすること』

と説明出来ます。

イメージとしては、その会計年度の記録を行ったノートを閉じて引き出しにしまい、
次の会計期間のノートを新しく使い始めるといったところでしょうか。

これまで説明してきた通り、日々の取引が仕訳として記録され、
会計期間中の仕訳の集計や、決算整理仕訳による修正を経て、
会計帳簿は最終化されていきます。

ただし、この決算の作業をいつまでも行えるかというとそうではなく、
基本的には期末日後速やかに、その会計期間の数値を最終化することが求められます。

その理由ですが、いつまでも数値が修正可能な状況にあると、
次の会計期間の出発点としての数字が定まらず、支障が生じます。

また、上場企業であれば、決算を経た財務諸表を社会に対して公表することが法律によって定められているのですが、
その期限も明確に定められており、会計帳簿の早期の最終化が求められるわけです。

一般的な上場企業であれば期末日後、数週間から1カ月程度で会計帳簿を締める、
つまり、決算の作業を終わらせることがほとんどです。

そしてこの期限があるからこそ、多くの会社の経理部の方は決算の時期は非常に忙しく、
深夜残業や休日出勤、時には徹夜をするケースもあったりします。

先ほど触れたように日本の会社は3月末を決算日とするケースが多いですから、
花見で浮かれることもなく、また、時にはGWも働き詰めなんてこともあるわけですね。

今回のまとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は決算とは何か?という点について解説してきましたが、
特に覚えていただきたい点は以下の通りです。

  • 決算ではまず会計期間を通じて記録された仕訳を集計する
  • 集計された記録に対して必要な決算修正仕訳を反映させる
  • 上場企業であれば決算作業には期限がある

次回からは個別の勘定科目の取り扱いについての解説を始めていく予定です。

それではまた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました