この記事は以下のような方にオススメです。
- ESG投資に興味がある方
⇒ESG投資の対象銘柄選定の指針となる『ESGレーティング』について解説しています。 - どのESG評価機関を信頼すればよいか迷っている方
⇒評価機関そのものの評価の妥当性を評価した『Rate of Raters』について説明しています。 - 企業のESG対応について分析している方
⇒参考となる各企業のスコアの確認方法を説明しています。
どうもこんにちは、じょんです。
先日書いたコチラの記事。

ESGに関連する話として、『ESGDD』の概要について説明していますが、私たち個人投資家にとってもESG投資というのは関心が高いのではないでしょうか。
証券会社も個人投資家を対象としたESG関連のファンドを売り出していますが、総じて信託報酬が高めに設定されているのが難点であり、筆者からすると少し手を出しにくい商品となっています。
そんな私たち個人投資家がESG投資を行う際の参考になる指標として、今回は『ESGレーティング』について解説していきます。
ESGレーティングの概要
ESGレーティングとは?
あらためて、ESGレーティングの定義は以下の通りです。
専門のESG評価機関が、各企業のESG関連情報を収集・調査して、その対応を評価すること。
このESG評価機関による評価結果は機関投資家のみでなく、その多くは私たち個人投資家にも無料で公表されており、投資対象企業の選定を行う際に、ESGへの対応状況の良し悪しを考慮することが可能となるわけです。
評価機関の評価を行う『Rate the Raters』
昨今のESGへの注目度の高まりとともに、ESG評価機関の数も相当数に上ります。
この点、評価機関の数が増えたことで、投資家からすると
『どの評価機関を信頼すればよいのかわからない!』
という声も出てくるわけですが、そんな声に対応しているのが『Rate the Raters』です。
『Rate the Raters』というのは、SustainAbility社による「ESG評価機関の評価そのものの妥当性の評価」を指しますが、最新の評価結果である『Rate the Raters 2020』によれば、機関投資家による、ESG評価機関のUsefulness(使い勝手)及びQuality(品質)の2つの観点からの評価は以下の結果となっています。
ご覧のように、Usefulness及びQualityのいずれの観点からも上位に入る評価機関の顔ぶれは同じであることが分かります。
なお、Qualityの面でトップの評価を得ている「RobecoSAM」は、ESGレーティング事業を後述する「S&Pグローバル」へと譲渡しています。
東証が紹介するESG評価機関
日本においても、東証がWEBサイト上で7つのESG評価機関を紹介しています。

東証が紹介しているということで、私たち個人投資家からしても信頼のおける機関であることが想定されますが、この内、『Rate the Raters』においても上位の評価を得ていた、「Sustainalytics」、「CDP」、「MSCI」、「S&Pグローバル」、の4機関について、今回は概要を解説していきます。
ESG評価機関4選
Sustainalytics
まずは、Usefulnessの評価でトップとなっている「Sustainalytics」ですが、先に挙げた東証のWEBサイトでは以下のように紹介されています。
モーニングスターグループの一員であるサステイナリティクスは、25年以上にわたり、世界中の投資家による責任投資戦略の開発と実践をサポートしてきたESG調査・レーティング・データ提供のリーディングカンパニーです。40を超える産業分類において分野横断的な専門知識を持つ200名以上のアナリストを有しており、日本を含む世界16拠点において、数百社におよぶ世界有数の資産運用会社や年金基金と提携しています。
コチラは以下のサイトの中段にある『Find a company by name or ticker』の欄に企業名を入力することで、スコアを確認することが出来ます。
試しに日本を代表する企業であるトヨタ自動車(Toyota Motor Corporation)を検索してみると以下の結果が表示されました。
ESGリスクが数値化されNegligibleからSevereまでの5段階で評価されるため非常に分かり易く、また、競合他社との比較も表示されることから、Usefulnessがトップというのも頷ける使いやすさかと思います。
CDP
次に、UsefulnessとQualityのいずれも2位の評価となっている「CDP」ですが、東証のWEBサイトでは以下のように紹介されています。
2000年にロンドンで設立された非営利団体。気候変動、水セキュリティ、森林減少リスク・コモディティの分野における、企業や自治体のグローバルな情報開示基盤を提供し、収集した情報は投資家や企業、各国政府に活用しています。
コチラは以下のサイトの下段にある『Search for a city or company name』の欄に企業名を入力することで、スコアを確認することが出来ます。
なお、ご覧頂くとわかりますが、企業だけではなく都市の評価結果も示している点がユニークです(残念ながらまだ東京は登録されていません)。

先ほど同様にトヨタ自動車を検索してみると以下の結果が表示されました。
2021年の評価結果はまだ表示されませんが、2020年の評価結果としては、Climete Change(気候変動)とWater Security(水の安全保障)の点では最高評価となる『A』とされています。
なお、Forests(森林保存)の点では『F』とされていますが、これはどうやら評価に必要となる十分な情報が提供されなかったことを意味しているようです。
MSCI
次は、評価機関として有名な「MSCI」ですが、東証のWEBサイトでは以下のように紹介されています。
MSCI ESGリサーチは世界中の数千社の環境、社会、ガバナンスに関連する企業の業務について、詳細な調査、格付け、分析を提供しています。
コチラは以下のサイトの中段にある『Search by company or ticker』の欄に企業名を入力することで、スコアを確認することが出来ます。

ここでもトヨタ自動車を検索してみると以下の結果が表示されました。
スコアはCCC~AAAまで9区分にランク付けされますが、面白いのは競合他社との単純なランクの比較だけでなく、上記のトヨタ自動車の例でいえばClean Techの分野で業界を牽引しているなど、どの分野が業界内で優れているのかが一目でわかるため、使い勝手が優れていると言えるのではないでしょうか。
S&Pグローバル
最後は、言わずと知れた評価機関である「S&Pグローバル」です。
S&Pグローバルは、S&P グローバル・レーティング(格付)、S&P グローバル・マーケット・インテリジェンス(データおよび分析ツール)、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス(指数)、およびS&P グローバル・プラッツを傘下に持つグローバル金融サービス会社です。ESGの分野では、SAMやTrucostの幅広いデータベースと調査技術に基づく企業評価やリスク分析、長期的な持続可能な成長に関する情報や投資ツールを提供します。
コチラは以下のサイトの下方にある『Search for a company’s ESG score』の欄に企業名を入力することで、スコアを確認することが出来ます。
トヨタ自動車の評価結果を検索すると以下の結果が表示されました。
コチラはEnvironment、Social、Governanceのそれぞれの観点からのスコアが競合他社との比較の形で確認ができる点が特徴的です。
ちなみにトヨタ自動車の場合、いずれの観点においてもIndustry Mean(業界平均)を上回っているものの、Industry Best(業界最高水準)はまだ遠いという評価結果となっています。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回紹介したESGレーティングはいずれも無料でご覧いただけますので、投資機関で働かれている方だけでなく、個人投資家である皆さんもぜひ、ESG投資に参加するために、参考にされていみてはいかがでしょうか。
ESG投資にまでは興味がない方は、お勤めの会社の評価を知るだけでも、ESGへの関心が深まるきっかけとなるかもしれませんのでオススメです。
ちなみに筆者の感覚からすると、機関投資家の評価結果と同様にSustainalyticsが最も使い勝手が良いように感じましたし、Qualityの面でも高く評価されているようですので、個人的には今後投資対象を決める際には、Sustainalyticsの評価結果も参考にしてみようと考えています。
(とはいえ、筆者の場合はインデックスファンドをコアとしているので、あまりお世話になる機会はなさそうですが)
それではまた。
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