監査泣かせの仮勘定 – その他の資産・負債【簿記3級解説#19】

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どうもこんにちは、じょんです。

今回は貸借対照表の残りの勘定科目についてそれぞれ簡単に概要を解説していきます。

今回のポイントは以下の通りです。

  • 『未収入金』『未払金』は本業以外のツケ取引に用いる
  • 『仮払金』『仮受金』は詳細が分からない収支を一時的にプールする勘定科目
  • 『受取商品券』は換金時に『現預金』に振り替える

貸付金・借入金

銀行等との取引として、お金を借りる、もしくは貸すということが企業活動においてはよく生じますが、そのお金の貸し借りを表現するのが『貸付金』『借入金』です。

『貸付金』:将来お金を回収することが出来る権利であるため資産項目
『借入金』:将来お金を返済しなければいけない義務であるため負債項目

という取り扱いとなります。

例えば100万円のお金を貸した際の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
貸付金 100万円 現預金 100万円

そして、貸したお金を回収した際の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
現預金 100万円 貸付金 100万円

同様に、100万円のお金を借りて、その後返済した際の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
現預金 100万円 借入金 100万円
借入金 100万円 現預金 100万円

未収入金・未払金

次に、本業である商品やサービス以外の取引をツケで行った場合に用いるのが『未収入金』『未払金』です。
なお、おさらいですが、本業である商品やサービスをツケで行った場合には『売掛金』『買掛金』を用いる点に留意ください。

『未収入金』:将来お金を回収することが出来る権利であるため資産項目
『未払金』:将来お金を支払わなければいけない義務であるため負債項目

という取り扱いとなります。

例えば簿価100万円の土地を、100万円の掛けで売却した際の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
未収入金 100万円 土地 100万円

また、逆に100万円の土地を掛けで購入した際の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
土地 100万円 未払金 100万円

前払金・前受金

取引先との契約条件に従い、取引前にお金を払ったり、もしくは受け取ったりするケースがありますが、その場合に用いるのが『前払金』『前受金』です。

『前払金』:取引前に相手に対して支払ったお金であり言い換えれば、将来取引をするための権利金としての性質を有するため資産項目
『前受金』:取引前に相手から受け取ったお金であり言い換えれば、将来相手に対して取引を提供する義務を表すお金であるため負債項目

という取り扱いとなります。

例えば取引の頭金として100万円を事前に支払った際の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
前払金 100万円 現金 100万円

また、逆に取引先から頭金として100万円を受け取った際の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
現預金 100万円 前受金 100万円

立替金・預り金

従業員等のために、会社がお金を建て替える場合や、お金を一時的に預かる場合に用いるのが『立替金』『預り金』です。

『立替金』:将来相手からお金を回収する権利としての性質を有するため資産項目
『預り金』:将来相手に対してお金を渡す義務としての性質を有するため負債項目

という取り扱いとなります。

例えば会社が一括で支払った旅費交通費100万円の中に従業員が個人で負担すべき部分5万円が含まれていた場合の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
旅費交通費 95万円 現預金 100万円
立替金 5万円

また、企業は従業員に代わり給与から差し引いた所得税や社会保険料を納付する義務を負っていますが、給与総額が100万円、内15万円が税金や社会保険料相当額である場合、給与支払時の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
給与 100万円 現預金 85万円
預り金 15万円

仮払金・仮受金

少し理解が難しいのが『仮払金』と『仮受金』の2つです。

『仮払金』の例としてよく挙げられるのが、従業員が出張する際に軍資金としていくらかのお金を渡す場合です。
実際に何にいくらのお金を使うのかは将来までわからないものの、お金は出ていったという事実を表すために、一時的な措置として『仮払金』という資産項目の勘定が用いられます。
『詳細がわからない』という意味で、『仮』という言葉が使われるわけです。

同様に『仮受金』というのは、取引先等から入金があったものの、何に対する入金かが未確定の時点において、一時的な措置として使われる負債項目の勘定です。

例えば出張をする従業員に対して、軍資金として10万円を渡した場合の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
仮払金 10万円 現預金 10万円

その後、10万円の内、5万円は取引先との交際費として、残る5万円は交通費として使用したことが明らかになった際には以下の仕訳を切ります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
交際費 5万円 仮払金 10万円
旅費交通費 5万円

次に、取引先から内容のわからない10万円が一旦入金され、後日、その10万円が売掛金の回収に該当することが明らかになった際の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
現預金 10万円 仮受金 10万円
仮受金 10万円 売掛金 10万円

この『仮払金』と『仮受金』、上の例のように内容が分かればよいのですが、実務では「なんだかよくわからないけどお金が余っている、もしくは無くなっている」場合の駆け込み寺として、とりあえず使われるケースが非常に多いというのが筆者の感覚であり、監査人泣かせのブラックボックスと化すケースもあります。

ぜひ経理を担当されている皆さんは、『仮払金』『仮受金』は必要最小限に抑えていただけると全監査人がよろこびますので、その点はぜひ覚えておいてください。

受取商品券

次に『受取商品券』ですが、これは字のまま商品の代金として商品券を受け取った際に用いる勘定科目です。

なお、簿記3級では『受取商品券』のみが試験範囲に含まれ、商品券を発行した側の企業の会計処理は現状は簿記1級の試験範囲となっています。

さてこの商品件、受け取ったままではタダの紙切れなわけですが、商品券の発行主体に商品券を収めることで、お金に引き換えることが出来ますので、将来お金を受け取ることが出来る権利を示すものとして資産項目に該当します。

例えば商品代金10万円を全て商品券で受け取った場合の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
受取商品券 10万円 売上 10万円

そして、商品券の発行主体に収めた際の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
現預金 10万円 受取商品券 10万円

なお、『受取商品券』は以前に解説した受取小切手と似たような性質を持っていますが、受取小切手は受け取った時点で『現金』として取り扱うのに対して、『受取商品券』は換金時に『現預金』に振り替える点にご留意ください。

この処理の差は、小切手の方がより容易かつ即時に現金化できることが背景にあると筆者は捉えています。

差入保証金

最後に差入保証金ですが、実務的に多いのはオフィスに賃貸で入る場合に支払う『敷金』です。

資金は退去時にオーナーが一部もしくは全部を徴収する可能性のあるお金であり、いわば入居者が事前に差し入れている保証金としての性質を有しているわけです。

そして、退去時に返還が見込まれる部分については、返還を受けることを示す権利として資産項目として取り扱われます。

例えばテナント入居時にオーナーに対して100万円の敷金を支払った際の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
差入保証金 100万円 現預金 100万円

今回のまとめ

いかがでしたでしょうか。

今回取り上げた勘定科目は重要性こそこれまで取り扱ったものと比べるとやや落ちますが、実務においてはどれも知っておかないといけないものばかりですので、是非覚えておくことをオススメします。

それではまた。

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