現金じゃないのに現金になる不思議 – 現金【簿記3級解説#6】

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どうもこんにちは、じょんです。

今回からは個別の勘定科目について、簿記ではどのように仕訳を記録していくべきかについて解説していきます。

初回の今回は『現金』について取り上げます。

まず現金と言うと皆さんはどういったものを思い浮かべますか。

ほとんどの方は小銭やお札といった、お金そのものを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

簿記における現金の概念も基本的にはその理解でよく、小銭やお札といったお金が動くときに現金と勘定科目が使われることになります。

一方で、銀行の預金残高が動く取引については『現金』ではなく『預金』と言う勘定科目が使われることになります。

『預金』についての解説は次回に行うこととして、今回は現金の取り扱いにつき解説していきます。

仕訳のパターン

現金が関連する仕訳はいたってシンプルです。
以前に解説した従業員の給料の支払に関する仕訳を以下再掲します。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
人件費 200,000円 現金 200,000円

現金というのは以前に解説した勘定科目の5区分においては『資産』に区分されますので、
現金を支払うという取引は資産の減少を意味しますから、現金は仕訳の貸方に記録されるわけです。
また、金額も実際に支払った金額がそのまま仕訳として記録されます。

逆に現金を受け取った際には、資産の増加を意味するわけですから、仕訳の借方に現金という勘定科目が記録されます。

例えばコンビニでお客さんから商品の売上代金1,000円を現金で受け取った場合の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
現金 1,000円 売上高 1,000円

以上!

現金は全ての会社に関係する非常に重要な科目でありながら、
仕訳として記録する基本的なパターンは非常にシンプルなものとなっています。

そしてここから少し難易度が上がりますが、
簿記の試験においてこの現金に関連する論点がいくつかありますので、それぞれ解説していきます。

個別論点

通貨代用証券

先ほど、簿記における現金とは基本的には小銭とお札だけと説明しましたが、厳密にはそうではありません。
実はすぐにお金に換えることが可能で、お金と小銭やお札と同じように使用出来る物、
についても簿記では現金の範囲に含めるのです。

このように、実際の現金でなくとも、現金と同じように取り扱われるものを『通貨代用証券』(つうかだいようしょうけん)と呼びます。

これ、皆さんどういったものが含まれるかイメージできますか?

筆者も実際に普段の生活では全く触れることがなく簿記の勉強を始めるまではイメージが出来なかったのですが、
一応以下のものが現金の範囲に含まれます。

配当金領収書:株式投資をしていない方にはピンと来ないかと思いますが、株式を保有していると定期的にこの『配当金領収書』が送付されてきます。この配当金領収書を銀行の窓口に持っていくとお金に換えてくれるのです。つまり、すぐにお金に換えることができるものとして『現金』の範囲に含めることとされています。
郵便為替証書:こちらは郵便局に持ち込むことでお金に換えてくれるものです。

例えば、会社がこの配当金領収書を受け取った際には、仕訳としては以下のように直接現金の増加として認識されるのです。
(なお、貸方の受取配当金というのは、収益に区分される勘定科目の一つです)

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
現金 10,000円 受取配当金 10,000円

小口現金

次は小口現金(こぐちげんきん)について、多くの会社においては、今ではほとんど小銭やお札を持っておらず、
大部分のお金というのは銀行預金に預けられています。

ただし、それでもちょっとした支出、例えば切手が必要になったり、ちょっとした備品が必要になったりしたときに備えて、
数万円から数十万円程度は現金として会社内に保管しておくことが一般的です。

この現金は本社の経理部なり総務部で管理されることが多いのですが、
営業部が急にこういった支出が必要になったときにわざわざ経理部なり総務部なりにお金をもらいにいくのは面倒ですよね?

また、支店の方が支出の都度、毎度本店の経理部なり総務部なりにお金をもらいに行くことは現実的ではありません。

そういった事態に備えて、経理部なり総務部の管理外の部署・支店に予めお金を渡しておき、
そのお金の中でやり繰りしてもらうことが一般的なのですが、このお金を『小口現金』と呼びます。

会社のルールにもよりますが、このお金は一定額を保つように定期的(週次や月次等)に使った分のお金を補充されます。
例えば10万円の小口現金が支店に渡されており、1カ月の内に郵便代2万円を使ったとしたら、
月末等にその1万円が本社の経理部なり総務部から補充されるわけです。

さて、問題はこの場合にどういった仕訳が記録されるのかですが、小口現金から支出されたお金の流れは、
都度仕訳として記録するのではなく、補充の都度、補充額に見合う仕訳を記録することになります。

先ほどの例では仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
通信費 20,000円 小口現金 20,000円
小口現金 20,000円 現金 20,000円

1行目の仕訳で小口現金が何に使われたのかを、
2行目の仕訳で小口現金の補充をそれぞれ記録しています。

どうでしょう、そこまで難しい話ではないですよね?

現金過不足

さて、現金の最後の論点は『現金過不足』です。

これもまた名前だけではあまりイメージがつかないかと思いますが、これはつまり、
『実際の現金の金額と帳簿上の現金の金額が合わない場合にとりあえず使われる勘定』
と表現できます。

経理部(または財務部)の方は日ごろから現金の残高というのを気にかけていますが、
たまに、手許の現金を数えたら会計帳簿上の現金の金額と合わないケースに遭遇します。

すぐに背景が分かればよいのですが、すぐには解明できないこともしばしば。

そんなときにこの『現金過不足』が使われます。

例えば帳簿上は10万円あるはずの現金が、手許の現金を数えた結果9万円しかなった場合、
1万円は何かに使われたものの、その使途が分からない場合、以下のような仕訳を記録します。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
現金過不足 10,000円 現金 10,000円

つまり、帳簿上の現金の残高を実際に手許にある現金の金額に合わせるように仕訳を記録するのです。
手許にある現金の金額の方が正しい可能性は高いですから(何等かの仕訳が漏れている可能性が想定されますから)、
実際の現金の金額に合わせるようにするのです。

ただしこの『現金過不足』という勘定科目は会計期間の途中においては使われますが、
決算の際にもまだ差の理由がわからない場合には決算修正仕訳にて対応が必要となります。

上の例のように実際の現金の方が少なかった場合には、その分が費用として、
逆に実際の現金の方が多かった場合には、その分が収益として、
それぞれ記録されます。

これは、何かわからないけれど何かに使われた、もしくは受け取ったという整理に基づくものです。
以下は上の例に関する仕訳です。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
雑損失 10,000円 現金過不足 10,000円

なお、『雑損失』というのは費用に区分される勘定科目の1つです。
雑多な費用を広く含む勘定科目としての性質をもっています。

今回のまとめ

いかがでしたでしょうか。

現金に関する仕訳はそこまで難易度も高くないですので、スムーズに理解いただけたのではないでしょうか?

今回のポイントは以下の通りです。

  • 簿記における『現金』には実際のお金ではないものも含まれる
  • 『小口現金』は一定期間の取引を纏めて仕訳として記録する
  • 帳簿と手許の現金の金額が合わない場合には一旦『現金過不足』を使う

次回は現金に関連する科目として、『預金』について触れていきます。

それではまた。

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